皮膚症状
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がん緩和ケアマニュアル目次に戻る皮膚のかゆみ
原因
- 皮膚の水分量の異常
- 乾燥した皮膚 湿潤した皮膚
- かゆみのある末期がん患者には、患者ならずといってよいほど皮膚乾燥症が合併している。原則として、かゆみの特定原因の治療を行う前に、あるいはその治療と同時に、皮膚の乾燥状態を改善する処置をとるべきである。
- 原発性皮膚疾患
- 内因性
- かゆみを増強する因子
- 脱水
- 不安
- 倦怠
治療
一般的方法
- 掻くことをやめさせる。静かにこする。
- 熱い風呂に長時間はいることをやめさせる。
- 皮膚を強く拭くことをさけ、軟らかいタオルで軽くたたいて乾かす。
- 温め過ぎや発汗を避ける。
- カラミン・ローションを用いる。
- クロタミトン・クリーム(オイラックス)1日2〜3回。本剤は、止痒作用と抗疥癬作用を持つ。
- 抗ヒスタミン薬含有クリーム1日2〜3回。(レスタミンクリームでよい)などを用いる。
- 抗ヒスタミン薬含有クリームを長期に用いると接触性皮膚炎を生じ、かゆみが増強することがある。皮膚炎(発赤)を生じたら、使用を中止し、発赤が消失するまで副腎皮質ホルモンクリームを用いる。
薬
- 抗ヒスタミン薬を使用する。
- 皮膚のケアを行わずに抗ヒスタミン薬を用いても利点はない。
- 抗ヒスタミン薬は効く人と効かない人がある。テルフェナジンは鎮静作用がないので、これを1日2回、60mg服用。鎮静作用のある抗ヒスタミン薬(経口プロメタジン75mgなど)は、就寝薬として有効。
- アレルギン 4mg 1日2〜3回
- ピレチア 25〜50mg 夜1回
- アリメマジン 5〜10mg 1日2〜3回、または10〜30mg 夜1回
- アタラックス 10〜25mg 1日2〜3回、または25〜100mg 夜1回
特定原因に対する治療
胆汁うっ滞(閉塞性黄疸)
- 6〜8時間ごとにコレスチラミン4g
- 抗ヒスタミン薬
- 胆汁ステント
- 肝門部リンパ節に対する放射線療法
- 男性ホルモン:アンドロゲンは服用しやすく、効果が確実である
- アンドロゲン、たとえばスタノゾロール(ウインストロール)1日5mg、またはメチルテストステロン(エナルモン)舌下錠として25mgを1日2回
- 最大効果の得られるまでに5〜7日を要する
- かゆみは軽減するが黄疸は増悪するかもしれない
原因不明のかゆみ
- 温かくしない
- 皮膚を乾燥させない
- 抗ヒスタミン薬
- 鎮静薬
- メチルテストステロン
- 外用副腎皮質ホルモン
皮膚乾燥症
- 末期がん患者のかゆみの大部分は、皮膚乾燥症に起因する。
- 実施可能な治療法
- 皮膚に湿気を与え、角質層を保持させる。
- 一般的注意
- 表面を物理的に被って水分の蒸発を防ぎ、あるいは皮膚に水分を化学的に結合させるため、潤滑剤的な基剤の軟膏を使用する。
- 油性成分が多いほど、皮膚の湿潤性を保つ効力が大きい。
- 油性成分の多い順に潤滑剤を述べると
- 精製油脂(白色ワセリン、流動パラフィン)
- 油脂性軟膏
- クリーム類(油性成分を水にした懸濁したもの)
- ローション
- 特異的な方法
- 石けんの使用を止める-----代わりに次のいずれかを使う。
- 乳液、乳化軟膏(市販品や局方のものがある)
- 入浴用皮膚軟化薬(Oilatum, Alpha Keriなど)
- 入浴後、必ず皮膚に油性成分をぬる。また就寝時にもぬる。刺激性のないハンドクリーム、ラノリン、皮膚軟化乳液、オリーブ油、油性カラミン、白色ワセリンなどを用いる。
- 乾燥した部分に、湿った布を15〜20分間あてる。布をとったら乾かないように軟膏やクリームを用いる。
- 炎症(発赤)があるときは、副腎皮質ホルモン含有クリームを1日2〜3回用いる。
湿潤した皮膚
- 角質層が水分を過剰に吸収して膨化すると、永久的な損傷を受ける。
保護バリアとなっている層が破壊される結果、通常は酵母菌、頻度は少ないがぶとう状球菌や連鎖状球菌などの感染が発生し、炎症が起こり、かゆみを生じる。皮膚の湿潤が、横臥したままの患者にしばしば起こる部位は、皮膚と皮膚とが接触している次のような部分である。
- 陰部 ことに失禁のあるとき
- そけい部
- 殿溝
- 乳房下部
- 指の間-----ことに関節炎のあるとき
- 潰瘍やストーマの周辺にも起こりやすい。
- 湿潤防止剤
- 吸着性パウダー(でんぷん、タルク、酸化亜鉛、ベントナイトなど)を避ける。過剰使用すると、皮膚に厚い膜となって付着してしまう。
- 皮膚を乾燥させる
- 軟膏やクリームの使用を避ける
- ヘアドライヤーで注意深く乾かす
- 感染があるときは、抗真菌薬液─1%クロトリマゾール液(エンペシド)→炎症(発赤)が強いときは、副腎皮質ホルモン液──1%コーチゾン液を24〜48時間、すなわち強い発赤が軽減するまで使用する
褥創
予後が数週間という短い場合でも、床ずれの治療は大切(患者に対して介護者に対しても、積極的な姿勢を維持するためにも)。残りの人生が最後の日数になったら、床ずれの治療よりは快適さが優先される。
予防法
- マットレスの使用
- エアーベッド
- 電動式定圧エアーマット
- 皮膚への圧力が25mmHg以下となる。このベッドがあれば患者は体位を変換しなくてすむ。
- 車椅子にはクッションを使用
- 肘あて、踵あての使用
- 枕の使用
- 体位変換
- 粘着ファームパッド(レストン3M)
- 皮膚のケア
- 体位変換時に視診を行う。
- 外傷の防止
- 体位変換や移動に際し、患者を引きずることを避け、必ず持ち上げる
- ゆったりした着衣、ゆったりしたベッドとする
- 寝具のしわや凸凹を避ける
- 温めすぎや発汗を防止する
- 絆創膏を使用しない
- 低アレルギー性のものを含め、すべての絆創膏類は、もろくなった皮膚の剥離や水疱形式の原因となりうる。緊張させて貼付しないよう注意を払う。
末期患者における好発部位
- 耳介 後頭部
- 胸椎棘突起部(後彎の頂上付近) 乳様突起部
- 尾骨部 肩峰部
- 大転子部 肩甲骨棘突起部
- 腓骨の骨頭部 上腕補ね外側顆部
- くるぶしの部分 座骨結節部
褥瘡の病気分類
- 1A期 蒼白化(局所の貧血)を伴う充血 皮膚の損傷がない
- 1B期 蒼白化を伴わない充血 〃
- 2期 皮膚表面の喪失(表皮がすりむける) 皮膚の損傷がある
- 3期 水泡と痂皮の形成 〃
- 4期 潰瘍化(未感染) 〃
- 5期 潰瘍の感染 〃
治療
- 栄養
- 数カ月の栄養不良がある場合、床ずれの治療に毎日ビタミンC1g/日の投与を考慮する。
- 血漿亜鉛が100μg/dl以下のときは、硫酸亜鉛の投与。経口亜鉛薬(グルコン酸亜鉛錠など)が、皮膚の治癒を促進するという証拠がいくつかある。亜鉛は必須微量元素で、慢性疾患患者の80%で不足している。亜鉛の1日の必要量は15mgである。
- 肉芽が形成されたら、再感染を防ぐ、いつも乾燥を心がける。
- 病気分類別治療
- 1A期(蒼白化を伴う充血)、1B期(蒼白化を伴わない充血)
- 圧迫の解除───発赤が消失するまで圧迫を避ける。
- 体表に対して
- こすらないこと
- 空気にさらすこと───すりむけたらヘアードライヤーで乾かす
- 2期(皮膚の表面の喪失=表皮がすりむける)
- 圧迫の解除をはかる。
- 体表に対して
- オプサイドなどの半透膜で被う。半透膜(オプサイト、バイオクルーシブ、テガダームなど)は、滲出液のない初期の蓐瘡に有効である
- 3期(水泡と痂皮の形成)
- 圧迫の解除をはかる。
- 体表に対して
- 水疱を破らない───半透膜で被う
- 痂皮───感染がなく、痛みもなく、患者の予後が4週以内なら、手をつけない。それ以外のときには、痂皮の鋭的なデブリドマンを行う。
- 4期(未感染潰瘍、潰瘍底の肉芽形成)
- 圧迫の解除をはかる
- 体表に対して
- Granuflex(英)、Duoderm(米)の使用。表面を防水加工したポリウレタン ・フォームでハイドロコロイド粒子と疎水性のポリマーをつなぎ合わせた包帯材料。
- ハイドロコロイド粒子が浸出物を吸収して膨化し、軟らかい湿性のゲルを作る。はがすと創傷表面にゲルが残り、肉芽を傷つけなくてすむ。ゲルは生食で洗浄すると除去できる。
- 創傷治癒を遅らせる要因として、感染、壊死組織、創の乾燥がある。
- イソジンは、創そのものに使用すると、多核白血球、大食細胞(マクロファージ)を破壊すること、さらに肉芽形成を抑制することがわっかている。創内には消毒剤を使用せず、生理的食塩水で丁寧に洗浄することが勧められる。他の消毒剤も細胞障害があり、創治癒を遅らせる原因になるので、創内に使用することは、いずれにせよ勧められない。
- 切除を考慮する(予後が6か月以上と推定されるとき)。
- 5期(感染潰瘍)
- 圧迫の解除をはかる。
- 体表に対して
- 消毒薬を用い、湿性--乾性包帯法を行う
- 創面清浄用のエレース、アナナーゼの使用。痂皮の部分が湿潤しすぎていて、外科的なデブリドマンが実施できない場合のみに使用するが、必要となることは余りない。
- エレース、アナナーゼは正常皮膚を膨化させることがあるので、十分に注意を払う
- 抗生物質の全身的投与
- 周囲に蜂穿織炎があれば、
- メトロニダゾール(フラジール)
- クリンダマイシン(ダラシン)
- 抗生物質の全身投与は耐性菌の増殖を促す。
悪性潰瘍
- 定義
- 体表の原発性ないし転移性悪性腫瘍に起因して形成された皮膚の潰瘍。
- 治療の目標は、悪臭の防止。悪臭を防止しないと、人が近づかなくなり、患者の社会的孤立につながる。
- 実施可能な治療法
- 0.1%のアドレナリン液で洗浄して、毛細血管出血を減少させる───治癒が目標でないときにだけ行う。
- 3%過酸化水素水による潰瘍の洗浄
- 局所に対する消毒薬の使用
- 吸着性包帯材料(Bandor◇)の使用
- 抗生物質の全身的投与
- メトロニダゾール(フラジール)、クリンダマイシン(ダラシン)
リンパ浮腫
がん患者では、四肢のうち一肢に起こることが多く、それに隣接する躯幹四半部まで腫脹することがある。
原因
- 乳房切除後
- 腋窩部、そけい部または骨盤内におけるがんの再発
治療の基本方針
- リンパ浮腫は、すっかり治癒することがない。
- 利尿薬はめったに効かない。
皮膚のケア
オイルや湿性クリームを塗布し、乾燥やひび割れを防ぐ。
副腎皮質ホルモン
体操
- 歩くのが最適だが、体操も役立つ。長時間じっと座っていると、浮腫が起こる。
- 治療としての体操には2つの目標がある。
- 各関節の可動性を保つ。
- 前腕や下腿の筋を使うことで、リンパ液の還流を改善する。
- 自発的な運動ができないときには、1日に少なくとも2回の他動的運動を実施する。
浮腫用サポーター(弾力性のある靴下など)をつける。
- 圧迫靴下が浮腫を抑える。日中はいて、夜は脱ぐ、靴下は足の先から大腿の付け根まで全部を覆う長さでなければならない(膝下までの靴下では、不快感が残り、膝の裏の圧が高まる)。きつくてはくのが難しいので、衰弱した患者や、浮腫が軽い場合には、あえて使用することはない。
- 挙上の効果は少ない
- 浮腫用サポーターを用いていれば、挙上しなくてよい。
- 三角巾などによるつり包帯を行わない
- 予後が非常に短いときには、上肢の腫脹を減らす試みは適切でないと考えられるので、歩く時には三角巾などによるつり包帯を用いる。
マッサージ
乳搾りのようなマッサージの手技が浅在性のリンパ液の環流を改善する。
マッサージは、すべてのリンパ浮腫に効果がある。
手技
健常な部分からマッサージを始め、次第に遠位側へと進めていく。リンパ管が収縮を増すので、浮腫の部分から周囲の浮腫のない部分へとリンパ液の流れが促進される。
マッサージには手掌を用いる。圧迫や叩き方は、皮膚ば動く程度とするが、皮膚に跡がつかない程度、あるいは発赤しないですむ程度とする。
まず体の腹側面をマッサージし、次いで患者の体位を変えて背側のマッサージを行う。躯幹と上肢または下肢を約20分間マッサージする。
強化療法
- 間欠的空気式圧迫法