精神神経症状
ホームページに戻る
がん緩和ケアマニュアル目次に戻る不眠
- 不眠は痛みの閾値を低める。介護者を疲れさせ、在宅ケアの体制を壊す原因ともなり、積極的な治療が必要。
- いろいろな症状(痛み、発汗、失禁、咳、かゆみ)や不安、うつ病によって、不眠の起こることもある。
- 悪夢をみると、患者は眠ることを恐れる。悪夢について患者と話し合う(ただし、夢の内容を解釈しない)。恐怖を吐き出させてしまえる。
- 睡眠中に死ぬのではないかと、恐れている患者もいる。死にゆく事への不安について、話し合っておく。
- 退屈あるいは昼間身体を動かさないでいると、不眠が一層ひどくなる。
- 原因
- 十分に治療されていない症状
- 睡眠を妨げる刺激
- 痛み
- 光
- 呼吸
- 音
- かゆみ
- 不随意運動を起こす下肢
- 失禁、頻尿
- 下痢
- 長時間の昼寝
- 居眠り
- 利尿薬
- 副腎皮質ホルモン
- カフェイン
- うつ状態
- 睡眠薬の中止
- 睡眠中に死ぬかもしれないとの恐怖
- アルコール(深夜におけるリバウンド的な覚醒)
実施可能な治療法
- 基本原因の治療
- 夜間の痛みのために眠れないときには、就寝時の塩酸モルヒネ投与量を日中の3倍とする。
- 薬以外の処置
- 昼間の活動の増加
- 夜間の光と音の減少
- 不安、恐怖について患者と話合う。
- 薬
- 処方内容を修正する。
- 副腎皮質ホルモンは朝1回の投与とする。
- 夜間の睡眠薬
- 短時間作用性のあるものを選ぶ。他の睡眠薬に切り換える場合には、いま使っている薬の最大量を試みてから。
- ハルシオン0.125mg、0.25mg錠(血中濃度最大値が0.75〜2.5時間で得られる。)半
- 減期が超短時間のため早朝不眠や日中の不安、反跳効果が見られる
- 脳神経系副作用の発生率が高い
- アモバン0.75mg, 1.5mg
- 抗不安薬----昼間のジアゼパム(セルシン)投与を夜10時1回の投与とする
- 不安が主な原因の場合には、経口クロルプロマジン。最初に10〜25mgを午後5時頃に飲み、2回目を就寝時に25〜50mg飲む。
- 三環系薬の処方
- 患者がうつ状態にある時には、鎮静作用のある抗うつ薬を処方する。アミトリプチリン25〜150mgを就寝2時間前に服用。
- 睡眠不足で非常に苦しんでいる患者には、モルヒネの筋注(昼間服用する4時間ごとの経口量の半分量)、クロルプロマジン50mgとスコポラミン0.4mgが非常に有効で、4時間後に繰り返しても安全。
- 上記のすべてが無効なら、クロルプロマジン50〜200mgの追加を試みる。
不安
不安の種類
- 全般性不安障害
- せん妄
- 恐怖症
- パニック障害
- 精神病による不安
全般性不安障害
特徴1.筋緊張,いらいら,痙撃,発汗・胃部の痛み・動悸・息切れ・しびれ・憂慮・心配・考えが堂々巡りなどの自律神経過敏。 警戒心,周囲をきょろきょろ見る,集中力の欠如,注意過剰,不眠,気が散るなどがみられる 2.死期が迫ってくると以下の原因でもこれらの症状が出現する電解質異常,酸/塩基平衡の変動,脱水,抗不整脈薬などの内服,肺炎,心停止の切迫など治療 1.ベンゾジアゼピン系薬剤
- ロラゼパム(ワイパックス)0.5〜3mg 2〜4回/日
- ジアゼパム(セルシン,ホリゾン0.5〜5mg 2〜4回/日
2.βブロッカーアテノロール(テノーミン)25〜50mg/日は不安による身体症状に,鎮静もなく効果があることが多い3.バルビツール酸系薬剤
- ベンゾジアゼピン系薬剤への反応が悪くなったときの代用によい
- フェノバルビタール(フェノバール)30mgなら8時間毎が初期量としてよい。夜間は60〜90mgにする
- 上記の薬剤に反応しない重症の不安に対してはチオリグジン(メレリル)10mg〜30mg 3回/日を開始する
せん妄
A.特徴1.認識力の障害a.知覚:視覚的および聴覚的な錯覚.混乱,幻覚,パラノィア(妄想症) b.思考:分裂と非連続性 c.記憶:時間的な失見当識2.意識集中の障害a.1日の問で変動する b.夜問に増悪する3.睡眠覚醒周期の障害a.日中の入眠 b.夜問の不安興奮4.精神運動異常 a.行動や言動の過多や過少 b.著しく奇異な反応 c.感情:無感動,うつ,恐怖,激怒B.痴呆との鑑別点 痴呆では,1.意識清明で周囲の状況に気付いている 2.誰もが知っている事柄についての知識の欠如 3.せん妄におけるような症状の変動がない 4.薬物療法は通常必要としないC.がんの場合の原因1.中枢神経系への転移や代謝性脳症 a.主要臓器不全 b.電解質異常 c.栄養 2.感染症と敗血症 3.循環不全 4.薬物の作用a.オピオイド,鎮静薬,制吐薬,抗コリン薬,シメチジン,ジゴキシン,βブロッカー,抗不整脈薬など b.ベンゾジアゼピン系薬剤は禁忌(5)5.腫瘍随伴症候群D.治療1.静かにしたり,見慣れたものを周囲に置いて,不安や失見当識を滅らす。また,カウンセリングを頻回に行い, 患者や家族を安心させる 2.ハロペリドール(ケセラン,セレネース)a.0.75〜6mg/日の内服または筋注で鎮静なしに不安興奮を軽滅する。必要なら30〜60分おきに使用する 錐体外路症状には必要ならジフェンヒドラミン(ベナ,レスタミン)25〜50mgを4時間毎 症状が軽度のときハロペリドール0.75mg使用を基本とする 十分な効果を得るのにベンゾジアゼピン系薬剤(たとえばロラゼパム初期量1〜2mg)とハロペリドールの併用が 必要となることがある3.チオリダジン(メレリル)a.さらに強い鎮静が必要なとき使用する b.10〜25mg 3回/日より開始し,さらに鎮静が必要なときクロルプロマジン(ウインタミン,コントミン)25〜50mgを 6時間毎に使用するlV.恐怖症A.広場恐怖症には恐慌発作(パニックアタック)を伴うものと伴わないものがある B.社会恐怖 C.単純性恐怖症はきわめ.てあたりまえのもので,たとえば,死に際して,棺の中に閉じ込められる恐怖として現れるのがそれである D.治療
- イミプラミン(イミドール,トフラニール)
- 末期患者ではかなり少ない量でよい
- アルプラゾラム(コンスタン)1.2mg/日分
抑うつ状態
ターミナル・ケアにおいては,うつ状態が次の2つのどちらであるかを見極めるよう努カすることが大切である。つまり,病気や死に際して予期される反応性の抑うつ状態か,あるいは,より深刻で機能障害を伴う内因性のうつ病なのかである。報告によってまちまちであるが,約50%の頻度で抑うつ状態がみられる
診断の手がかり
A.抑うつ状態の既往歴はないか
B.自律神経機能に関しての深刻な訴えはないか一ただし慢性的身体疾患による訴えが混じると紛らわしくなる
C.社会的機能が極端に失われていないか
D.無力感,自尊心の喪失,無価値観や罪悪感,自殺念慮はないか
治療のコツ
A.患者の症状の原因となっている可能性のある薬物の除去
B.もちろん,患者を実際に支援したり,患者に共感したり,患者のために時間を割いたり,患者に気持ちを向けたり,患者とコミュニケーションを持ったりということが必要である
C.抑うつ状態がより強いときは,薬物投与を考える
1.三環系抗うつ薬
a.アミトリプチリン(トリプタノール,ラントロン)一夜問睡眠障害があれば
b.デシプラミン(パートフラン)一睡眠障害が問題ではなくて抗コリン作用を最小限にしたいとき
10〜25mg眠前で開始し,効果が現れるまで,数日毎に25mgずつ増量する(最大100〜150mgまで)
2.トラゾドン(レスリン,デジレル)は,かなり鎮静力がある75〜100mg/日、一日200mgまで、分1〜分3