消化器症状

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口渇

  • 口渇と多尿をきたす疾患
    • 高カルシウム血症
      • 口渇と共に吐き気、眠気を伴う場合には、高カルシウム血症の可能性が非常に高い。
    • 糖尿病(副腎皮質ホルモンによる)
    • 尿崩症
  • 完全な嚥下困難の場合、患者は口渇を訴えるので、静注による補液の必要がある。在宅では、これに代わるものとして、尿路カテーテルを使って水道水の注腸を行うと、同じような効果が得られる。
  • モルヒネは口渇の軽減や消失に役立つ

食欲不振

  • 食べ物への関心がなくなること、それより軽度であるが飲み物への関心もなくなることは、死が近づいた患者には自然なことである。
  • 病気が進むと患者の味覚に変化がおこり、好みが変わるのが普通であることを、家族に説明しなければならない。
  • 家族ができることは、最後まで水分を飲ませるようにすることであって、食べるようにすることではない。
  • 死を間近にした患者に食事を強要するようなことを、家族にさせてはならない。
  • 吐き気、便秘、口内不快感、痛み、高Ca血症など、補正できる原因があれば対処する。
  • 対処法
    • 食事時間を厳格に守るよりも、おなかがすいたと感じた時に食べさせる方がよい。
    • 少量の食事には小さな食器を使った方が患者にとって快い。
    • 食欲が出たらすぐに食べられるようにしておく。
    • 電子レンジの利用。
    • 誰でも、服装を整え、食卓につくと、よく食べられる。
    • 食欲刺激薬
      • 副腎皮質ホルモン:80%の患者の食欲回復に役立つ。
        • プレドニゾロン10〜30mg/日、デキサメタゾン2〜4mg/日
      • アミトリプチリン(トリプタノール)25〜50mg夜1回
      • シプロヘプタジン(ペリアクチン)4mg1日3回
      • メトクロプラミド
        • 食欲不振が膨満感や胸灼けによっておこるのは、胃の拡張不全が原因である。その時には、食前のメトクロプラミド10mgが有効である。

味覚異常

  • 発生頻度
    • 全がん患者の50%、末期患者の約20%が、味覚の変化を訴える。
  • 亜鉛不足がその原因の一つと考えられている。
  • 味覚異常は必ずしも永久に続くものではなく、たとえ数週間たった後でも、回復することがある。
  • 臨床症状
    • 多いのは肉類への嫌悪感であり、金属的な味がする。甘い物も味わえなくなる。
    • 「食べ物の味が悪い」
    • 「口の中で金属の味がする」
    • 味覚閾値が変化する。たとえば、
      • 甘味(白糖)に対する閾値が上昇する。
      • 甘味(白糖)に対する閾値が低下する。
      • にが味(尿素)に対する閾値が低下する。
  • 対策
    • 歯肉炎や鵞口瘡を治す。
    • 食べ物が甘すぎたら、塩を加え、にがい時には、砂糖を加えるとよい。
    • 食べ頃の温度を変えるとよいこともある。
    • 食事中の尿素含有量を減らす。白身の肉、卵、乳製品を摂る。
    • 尿素を含む食物のにが味を消す。
      • スープやソース類に、ワインやビールを加える。
      • 濃い味の調味料を多めに用いる。
    • 流動物を多くする。
    • 味覚の全体的な低下を克服できるよう援助するため、次のようなものを選ぶ。
      • 酸味の食物(漬物、レモンジュース、酢のもの)、調味料
      • 味があとにのこるような食物(新鮮な果物や硬いキャンディー)

口臭

  • 原因
    • 口腔内、咽頭、鼻腔、副鼻腔、肺に生じた感染または化膿性病変
    • 胃内容の停滞とその流出
    • 喫煙、あるいはにんにく、玉ねぎ、アルコール、などの摂取に由来する揮発性産生物の肺や唾液腺からの排泄
  • 治療法
    • 一般的な方法
      • 口腔内や歯の清潔の保持
      • 適切な水分摂取
    • 口腔内カンジダ症の治療
    • 口腔内洗浄液の使用
      • 口腔内洗浄液(イソジンガーグル)
    • 口内乾燥が著しいときは人工唾液(サリベート)
    • 嫌気性菌によく効き、歯肉炎や肺腫瘍による口臭を減らすのに、メトロニダゾール250〜500mgの1日3回服用が有効。

     

口内乾燥

  • 原因
    • 全身衰弱に関連したもの
    • 口からの呼吸
    • 脱水
    • 薬によるもの
    • 抗ヒスタミン薬
    • 抗パーキンソン薬
    • 鎮痙薬
    • ベラドンナ・アルカロイド
    • 抗精神病薬
    • 三環系薬
  • 対策
    • 処方内容の再点検と可能な薬を中止
    • 口腔内ケアを2時間ごとに
    • 口腔内洗浄液によるうがい
    • 舌苔の除去
    • 食べ物をしゃぶる。
    • チューインガム
    • 酸味のキャンディ
    • 口腔内、口唇の加湿
    • 点眼薬容器を用いた水の供給
    • ガーゼに包んだ氷
    • 室内加湿器
    • 口唇にワセリンを薄く頻回にぬる。
    • 人工唾液(サリベート)

口内炎

  • アフタ性潰瘍の治療
  • 抗生物質と消毒薬
    • 炎症と免疫反応の抑制
    • トリアムシノロン・アセトニド(口腔用ケナログ軟膏)
    • デキサメタゾン(デキサルチン軟膏)
  • 対症的治療
    • □局所麻酔薬
      • 2%キシロカイン・ゼリー

カンジダ症

  • 副腎皮質ホルモンや抗生物質を常用している患者に、特に起こりやすい。
  • 症状
    • 口内の痛み
    • 鵞口瘡は、ただれや典型的な症状が出現する前に、口の渇きを呈する。口渇を訴える末期の患者にはすべて、鵞口瘡の治療をすべきである。毎日、ガーゼなど巻いた舌圧子と懐中電灯を用いて、患者の口腔内を丁寧に診察する。
    • 嚥下困難
    • 嗄声
  • 治療
    • 効果があがるまでに10日が必要。
    • ナイスタチン
      • 懸濁液(マイコスタチン懸濁用)1から5ml(100,000単位/ml)4時間ごと。
    • 1日にケトコナゾール200mgの錠剤を与えることもある。これらで、24時間たつと、重篤な鵞口瘡がきれいになる
    • アンフォテリシン(ファンギゾンシロップ)
    • 食道カンジダ症
      • 痛みでのみ込むこともできず、患者は特に熱いものを飲む時に、不快感を感じると訴える。
      • ケトコナゾール1日200mgで治療すると、通常24から48時間後には嚥下できるようになる。

 

口腔ケア

  • 必ず起こる3つの問題
    • 口の乾き、口腔内のただれ、舌苔
  • 日常のケア
    • 12時間毎にうがいと歯磨き
    • 義歯は一晩、水の中に浸す
    • 毎食後、口腔内を洗浄する。
    • 口呼吸をする患者には、より頻繁に行う
    • 室内加湿器
    • 乾いた口唇にワセリン
    • 人口唾液
  • 口腔内のただれ
    • 鵞口瘡の治療
    • 義歯を再矯正
    • 歯肉炎はメトロニダゾールで治療する
    • 口腔潰瘍には、トリアムシノロン・アセトニド
  • 口腔や咽頭の痛みには、粘稠なリドカイン含嗽液で、対症療法
  • 舌苔は、口臭や鵞口瘡の原因になる。
    • 過酸化水素洗浄液(水に2%の過酸化水素を混ぜた液は)は泡立つので、舌の表面から舌苔を取り除く

胸やけ

  • 原因:下部食道括約筋(LES)の緊張低下
    • 抗コリン作動性薬
    • カルシウム・チャンネル阻害薬
    • ジアゼパム
    • 硝酸塩、亜硝酸塩
    • アルコール
    • チョコレート
    • 脂肪
    • 炭酸飲料
    • 過量の食事
    • 喫煙(ニコチン)
  • 治療法
    • 原因となる食べ物を避ける。
    • 禁煙
    • ベッドの頭側を高くする。
      • LESの圧の上昇
        • メトクロプラミド(プリンペラン)
        • ドンペリドン(ナウゼリン)
        • ベタネコール(コリン作動性薬、ベサコリン)
      • 胃酸の減少をはかる。
        • 制酸薬
        • ヒスタミンH2受容体遮断薬

嘔気嘔吐

  吐き気は嘔吐よりもはるかに苦痛である

  • 原因
    • 頭蓋内圧亢進(脳転移)
    • 便秘
    • 胃腸管の閉塞
    • 肝腫大
    • がんの播種
    • 腎不全
    • せき
    • 痛み
    • 不安
    • 高Ca血症
    • 低Na血症
    • 消炎鎮痛薬
    • アスピリン
    • 放射線治療
    • 化学療法
    • カルバマゼピン(テグレトール)
    • 副腎皮質ホルモン
    • ジゴキシン
    • オピオイド
    • 鉄剤
    • テオフィリン(テオドール)
  • 対策
    • 以下の場合は非経口的投薬を少なくとも24時間にわたって実施する。
      • 食後あるいは服薬後に嘔吐があるとき。
      • 8時間に1回以上の嘔吐があるとき。
    • 補正できる原因を補正する。
      • 便秘
      • 頭蓋内圧亢進
      • 高Ca血症
      • 嘔吐の原因となる薬の中止や変更
      • 標準的なアスピリン製剤を用いているときは腸溶性アスピリン(EA錠)
    • 制吐剤→モルヒネの副作用参照

      制吐薬は6つのグループに分けられる。

      1. 中脳にある嘔吐中枢に働く制吐薬。これには抗コリン作動性作用もある(口渇、眠気、眼のかすみなどを起こす)。抗ヒスタミン薬も抗コリン作動性作用がある。
        • スコポラミン
          • シクリジン(またはメクロジン)およびハロペリドールの代わりにスコポラミン0.3mg舌下錠または0.4mgを皮下注射1日3回。
        • 抗ヒスタミン剤:延髄の嘔吐中枢に作用する)
          • ジフェンヒドラミン(ベナ、レスタミン)25〜50mgを4〜6時間毎
          • クロルフェニラミン(ポララミン錠)1〜2錠 12時間毎
        • シクリジン(ホモクロミン)
          • 吐き気が持続するならば、ハロペリドールの代わりに、より強い制吐薬を処方する。シクリジン50mgは8〜12時間ごとに、経口投与する。CTZに働く薬と併用する。乗物酔いの要素がある、例えば寝返りをうった時に吐き気がひどくなるような時には特に処方するとよい。ただ、少し眠気を誘い、口渇をまねく。
        • メクロジン(米)25mg1日2-3回(ボナミン)
      2. 主に化学受容体のトリガーゾーン(CTZ)に働く制吐薬(CTZは延髄にあり、嘔吐中枢に近接している)。(筋硬直や随意運動の緩徐化などのパーキンソン病様症状を発生させる)。定期的な制吐薬の注射を要する患者には、ハロペリドールを1日に5〜10mg持続皮下注入する。
        • プロクロルペラジン(ノバミン)5〜10mg8〜4時間ごと
          • モルヒネを使い始めた時には、プロクロルペラジン5mgを1日3回投与すると、吐き気を止めるのに役立つ。副作用も少なく、眠気もほとんど起きない。
        • チエチルペラジン
          • チエチルペラジンは通常10mgを1日2〜3回に分けて使う。座剤としても利用できる。
        • ハロペリドール
          • 強力制吐薬としては、第一選択の薬剤で、眠気を起こすことも少ない。普通、1.5mgを就寝時に服用させることから始める。さらに、5mgを就寝時に服用させることから始める。さらに、5mgを1日2回に増量する。錐体外路症状(当初は筋硬直)がみられる。持続皮下注入でも用いる。
        • クロルプロマジン
          • クロルプロマジンは強力な制吐薬だが、眠気と口渇きをもたらす。尿毒症による吐き気で、患者がしゃっくりをしている時には、これが適応となる。不安感から吐き気が起こったり、何か鎮静薬が必要になったときなどには、クロルプロマジンを投与する。経口投与としては、通常10〜25mgを1日3回与える。
        • メトトリメプラジン
        • ドロペリドール(ドロレプタン)の2.5〜5mg筋注は制吐作用が強い。
        • フルフェナジン1mg1日2回(フルメジン)
      3. 胃運動促進性制吐薬はCTZにも働き、胃内容排出と腸管の蠕動運動を促す。胃内容排出が悪い時、メトクロプラミドがよい。仙痛のある時には投与してはならない。持続皮下注入できるが、胃の内容物の停滞を克服するために、大量投与(1日240mgまで)も行われている。制吐剤の併用は抗ヒスタミン薬がよい。
        • ドンペリドン10-20mg1日2回〜4回
      4. ステロイド
        • プレドニン20mg 4回/日まで 
      5. 抗不安薬
        • ロラゼパム(ワイパックス)0.5〜2mg 4時間ごとまで
      6. 抗セロトニン剤は抗ガン剤の副作用以外の嘔吐にも有効であるが、今のところ保健適応はない。塩酸オンダンセトロン(ゾフラン)、塩酸グラニセトロン(カイトリル)、塩酸アザセトロン(セロトーン)などが市販されている。

嚥下困難

  • 閉塞性病変による嚥下困難では、まず固形物の通過が不良になり、ついて流動物の通過が障害される。
  • 神経と筋の障害による嚥下困難では、固形物と流動物の通過がほぼ同時に障害される。
  • 完全な嚥下困難の場合、ごく少数の患者に対して、鼻腔栄養法、非経口的栄養法、胃瘻造設などが例外的に行われる場合がある。しかし、普通は、いたずらに苦しませて延命するだけになるので避けた方が賢明である。
  • 原因
    • カンジダ症
      • 飲み込んだ時に胸灼けしたり、気持ちが悪くなったりした時は、カンジダ症のためと考える。
      • カンジダ症は、飲み込む時に痛みを起こす(熱い飲み物でさらに痛みが増す)。
    • がん
      • 口腔、咽頭、食道の腫瘤、
      • 食道壁の腫瘍浸潤→神経叢の障害
      • 外方からの圧迫(縦隔の腫瘤)
      • 神経周囲の腫瘍浸潤(迷走神経、交感神経) 
      • 咽頭障害、良性食道狭窄(放射線治療後の線維化)
    • 高Ca血症
    • 強い全身衰弱 
  • 対策
  • 副腎皮質ホルモンの大量投与(デキサメタゾンを1日8〜12mg)
  • 食道埋め込みチューブ
    • Expandable metallic stent(EMS)留置も使用されるようになってきた。
    • 挿入により半固形物が食べられるようになる。
    • 胃内容の逆流を防ぐため、肩の位置を枕2〜3個分高くして、食物をとらせる。
    • 咀しゃく時間を通常の2倍とる。
    • 食道内埋め込み式チューブ設置後の注意
      • 〈食べてはいけないもの〉
        • かたまりやすじの多い食物、果物、厚切りチーズ
        • 落とし卵、目玉焼き、固いゆで卵、ポテトチップ、フライドポテト
        • ミキサーにかけてない魚、ミキサーにかけてない生野菜
        • 焼きたてのパン、トースト、ふさの皮(中果皮)のある果物、すべての肉はこまかく切る。
      • 錠剤はそのまま服用せず、砕くか、溶かし服用すること。
      • 食事中は、発泡性の飲み物を一口ずつすする。
      • チューブがつまったときには発泡性の飲み物をゆっくり飲む。 
  • 内視鏡的レーザー治療による焼灼

唾液産生の抑制

完全閉塞となり、溜まった唾液が口から流出するとき。

  • 抗コリン作動性薬
    • スコポラミン(ハイスコ )0.5mgを4〜6時間おきに筋注、または持続皮下注
  • その他
    • プロバンサイン
    • 三環系薬
    • フェノチアジン
    • 唾液腺に対する放射線照射
      • 400-1000cGyにより一時的に分泌が減少する。

黄疸

  • 1か月以上の予後が期待される場合には、胆汁ドレナージを考える。
  • 最良の胆汁ドレナージ法は、内視鏡を用いて、逆行性に胆管プロテアーゼ(ステント)を挿入する。できれば、胆汁の体外ドレナージは避けた方がよい。胆汁がガーゼや当て綿を通して衣服を汚し、皮膚のただれを惹き起こす。

便秘

化学療法以外では、ガン患者の嘔吐の最も多い原因である

  • 原因 
    • 器質性
      • 腫瘍による有形便の通過遮断
      • 肛門の狭窄
    • 薬剤
      • 抗コリン作動性薬、アルミニウム制酸薬、バリウム、オピオイド、三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤など
    • 全身性
      • 全身衰弱
      • 長期臥床
      • 精神活動の鈍化 
  • 症状
    • 腸閉塞と類似の所見を示すことがある
    • 排便がまったくない。または、少量の水様便が頻繁に出る。
    • 腹部膨満
    • 嘔気、嘔吐
    • 仙痛様腹痛(ときに)
    • 直腸の収縮による痛み(しばしば)
    • 錯乱、不穏
    • 腸内ガスの貯留
      • 腸内ガスによる腹部膨満は、ラクツロース[緩下剤の一種]の長期投与後に起こりやすい(緩下剤変更を考慮すること)。ガスによる膨満は、膵がんの場合の吸収不良の特徴でもあるが、これには膵酵素代替薬が奏効する。 
  • 対策
    • 一般的ケア
      • 可能なら患者に動いてもらう
      • 水分および果汁の摂取量を増量
      • 腸蠕動を亢進させる線維性食事を増量
      • ベッド用便器の使用を避ける。自力で便所が使える工夫をする。
      • 患者が便意を訴えたときにはすぐ対応する
      • 足台で足を支え、腹筋の緊張を助ける。 
    • 内服薬
      • 便が硬い場合
        • 小腸洗浄薬を与える
          • ラクツロース・シロップ10〜30mlを1日3回または、硫酸マグネシウム5〜10mlを大量の水と一緒に午前中に飲む)。
          • 30mlのラクツロースが、結腸中の糞塊量を500mlにまで増大させるので、それが刺激となって、大腸・小腸双方の蠕動運動を促す。
          • 硫酸マグネシウムは小腸(浸透圧性)洗浄薬で効力が強く、蠕動運動を亢進させる。普通は、他の緩下薬では効かない重症便秘のための薬として使われる。
        • オリーブ油120mlの停留浣腸を行い、一晩停留しておく。
      • 軟らかい便の場合
        • 蠕動刺激性緩下薬
        • ビサコジル座剤(テレミンソフト)を反応があるまで毎日1回。
      • 緩下薬を最高量飲ませても排便がないとき
        • 朝5〜10mlの硫酸マグネシウムを経口投与すると(多量の水と一緒に)、小腸を急速に通過して、非常に排便効果を上げる。
        • 高圧浣腸
      • 結腸内の糞塊が触知できるような状態のときには、まずオイル停留浣腸か石鹸浣腸か水浣腸を行って便を軟らかくし、その後、グリセリン浣腸で腸を刺激する。
      • オピオイドを服用している患者には、ラクツロース10〜30mlを1日に3回、それに刺激性緩下薬を加えて投与する。2日以内に効果があらわれる。吐き気を催す人もいる。投与量が多くなると、腹部膨満やガスがたまる耐性を生じやすい。ラクツロース特有の甘味があるが、フルーツジュースに混ぜて飲めば、気にならなくなる。
      • バルク形成薬
        • 服用後、効果が出るまでには、数日かかる。便通をコントロールするのには、刺激性緩下薬や浸透圧性緩下薬に比べて有用性が小さい。
        • 腸に狭窄がある場合には、この薬は使ってはならない。 
  • 下剤の分類と薬剤選択の指針
    • 1. 塩類下剤
      • 1)習慣性がない
      • 2)腸管粘膜の炎症変化を起こしにくい→長期投与に有利→慢性便秘症の治療薬
      • 3)消化管よりの吸収は少ない
      • 4)服用しにくい(味のため)
      • 硫酸マグネシウム
      • 硫酸ナトリウム
      • クエン酸マグネシウム(マグコロール)
    • 2. 膨張性下剤
      • 1)習慣性がない→慢性便秘症の治療薬
      • 2)消化管よりの吸収はほとんどない
      • カルメロースナトリウム(バルコーゼ)
    • 3. 浸潤性下剤
      • 1)習慣性・副作用はないが作用自体が弱い
      • 2)腸管刺激性下剤との合剤として用いられることが多いため,長期投与には注意が必要
      • 強力バルコゾル
      • パージロン
      • ビーマスS
    • 刺激性下剤
      • 1)作用が強力
      • 2)習慣性をもつ
      • 3)長期投与により腸管粘膜に炎症を惹起しやすい
      • 4)他の下剤で無効の場合に併用する場合がある
      • 5)骨盤内充血を惹起することがあるので,妊娠中,月経時には避けたほうがよい
      • ビサコジル(テレミンソフト)
      • ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)
      • 酢酸ビソキサチン(エバール)
      • アローゼン,他
    • その他
      • レシカルボン坐薬
      • レーマグ錠 
  • 予防
    • オピオイド系の鎮痛薬を始めるときには、必ず軟化薬(酸化マグネシウム)と刺激性の緩下薬の両方を最初から処方する。刺激性緩下薬は1〜3錠を1日に2回服用すること。
    • 排便がない場合、3日目に坐剤か少量の浣腸を行い、薬も増量する。

下痢

原因

A、横械的原因

  • 便塊貯留一原因として最も多く,二次性の下痢や便失禁を起こす
  • 不完全型腸閉塞
  • 大腸,直腸への腫瘍の浸潤

B、薬剤の副作用

  • 緩下剤の過剰投与
  • 広域スペクトラムの抗生剤
  • 抗癌剤
    • フルオロウラシル(5‐FU),マイトマイシンが下痢をきたしやすい。メトトレキサート,アドリアマイシンも原因となりうる
  • 制酸薬一とくにMg含有のもの
  • NSAID一多くは便秘をきたすが,メフェナム酸,インドメタシンは下痢の原因となる
  • テオフィリン,カフェイン
  • ホルモン剤一エストロゲン(プレマリン)
  • 血糖降下薬一スルホニルウレア(SU)剤
  • メトクロプラミド(テルペラン,プリンペラン)

C、炎症牲

  • 放射線治療の影響
  • 感染
  • 腸内細菌
  • クロストリジウム・デフィシル菌
  • ウイルス
  • 寄生虫,ランブル鞭毛虫
  • 性感染症

D、心因牲一緊張,恐怖,不安

  • 過敏性結腸症候群

E、吸収障害

  • 膵外分泌機能障害
  • 胆道閉塞
  • 盲端症候群
  • 短腸症候群一腸切除後一ストーマのある状態もない状態も含めて

F、食事性

  • 乳糖不耐症
  • ダイエット食品に含まれる過剰のソルピトール
  • 経管栄養

治療

  1. いろいろな検査をしなくても、病歴と身体所見で診断は推測できる
  2. 直腸診一摘便
  3. 口あたりのよい低残渣食
    1. 乳製品、ソルビトールを避ける
    2. 吸収不全が原因ならば,炭水化物を減らす
  4. 経口摂取が可能であれば糖を含んだ水分補給を行う〔例:日本ではポカリスエットなどのスポーツドリンク)
  5. 原因薬剤の中止
  6. 薬物療法
    • ロペラミド(ロペミン)2〜8mgを必要に応じて2〜4回/日まで
    • 抗コリン剤
    • 三環系抗うつ剤
    • パンクレアチン 3g/日 膵外分泌障害の時 

消化管閉塞

  • 原因
    • がんに関連するもの
      • 閉塞性非閉塞性後腹膜神経叢の障害
      • 多いのは、卵巣がん(25%)、結腸直腸がん(10%)
    • 治療に関連するもの
      • 薬、癒着、放射線治療後の線維化
    • 全身衰弱に関連するもの
    • 便秘:重篤な便秘でも腸閉塞に似た症状を起こし得る。
      • 閉塞の原因となる薬
        • オピオイド鎮痛薬
        • 抗コリン作動性薬
        • 抗ヒスタミン薬
        • ベラドンナ・アルカロイド
        • 向精神病薬
  • 治療
    • 外科的治療
      • 初めて腸閉塞を起こしたがん患者には、全身状態が良好で、患者が手術に前向きであれば、手術を考える。慎重に患者を選べば、数カ月は寛解状態でいられる。手術による死亡率も高い(14〜32%)
      • 理由
        • 10%は、原因が良性。
        • 10%は、原因が早期がん。
        • 大部分の例で、手術をすれば、再閉塞が起こらなくなる。 
    • 内科的治療法
      • 対症療法の目的は、痛みと吐き気を迎えて、軽い飲食を可能にする。食べ物によって、閉塞部位より上部の小腸で吸収される。1日1〜2回程度の嘔吐がときどきあっても、飲食は可能である。患者は腸閉塞の状態に2〜3週間耐えうる。
      • 点滴や吸引は、手術を準備している間の、あるいは手術施行を決定するまでの間の短期的な手段と考えるべきで、末期がん患者における不可逆的な腸管閉塞に対する継続的な内科的治療方法とはならない。他の方法で効果がないときの、最終的な治療法であり、あらかじめ十分に患者と話し合う。手術を行わない場合、輸液は不可逆的閉塞に対してかえって有害(5 p89)  
      • 鎮痛薬
        • 鎮痙薬
          • 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン)10mg〜20mg経口投与または皮下注射1日3回 
      • 投与経路
        • 薬の経口投与後30分以内に嘔吐したときには、薬が吸収されていないので、もう一度服用。
        • 鎮痛薬も制吐薬も座剤で投与すると、患者にとり楽。
        • 完全閉塞の場合には、非経口的投与が必要となるが、ポータブルの自動注入器を用いた持続皮下注入法がもっとも望ましい。スコポラミンを用いる。
  • 小腸の閉塞
    • 目標:嘔気を和らげ、嘔吐を1日1〜2回までに減らす。
    • 制吐薬
      • シクリジン(ホモクロミン)50mg、または、メクロジン(ボナミン)25mgを1日2回、シクリジンまたはメクロジンを増量して1日3回に、ときには2倍量。
      • 就寝時のシクリジンをハロペリドール(セレネース)5mgに変更する(高齢者では1.5mgで十分なことが多い)。
  • 十二指腸の閉塞
    • 膵頭部がん、器質的な場合と機能的な場合
      • メトクロプラミド(プロメチン)10mg1日3回経口投与または筋肉注射1日3回、嘔吐が悪化していれば、器質的閉塞なので投与を中止する。
      • デキサメタゾン4〜5mg、1日2回の経口投与、あるいは筋肉注射。2〜3日後に再検討、腫瘍に起因した強い炎症性変化がある場合には、症状の改善が得られる。
      • シクリジン(ホモクロミン)50mg、またはメクロジン(ボナミン)25mgを1日2〜3回の経口投与。嘔吐は1日3〜4回までに減少する。
  • 幽門の閉塞
    • 胃がんによる閉塞。
      • シクリジン(ホモクロミン)50mg,またはメクロジン(ボナミン)25mgを1日2〜3回経口投与。
      • デキサメタゾン4〜5mg、1日2回の経口投与または筋肉注射3〜5日目に再検討。

腹水

  • 実施可能な治療法
  • 化学療法
    • 腹腔内投与
  • 利尿薬
    • 利尿薬の使用法

      スピロノラクトン

      フロセミド

      第1日

      200mg/日

      60mg

      第2日

      200mg1日2回

      120mg/日

      第3日

      200mg1日2回

      120mg1日2回

  • 腹膜穿刺:患者がひどい腹水で、激しい不快感や呼吸困難を起こしたり、あるいは真直ぐ座ることもできない時には、救急的な腹腔穿刺が有効である。最初に2Pを急速に抜き取り、あとはゆっくりと1時間に1Pの速度で6P抜き取る。

人工肛門

  • 人工肛門の管理(ストーマ・ケア)
    • 単孔式人工肛門は、腸を切断して作られた人工肛門である。普通は、S状結腸(左腸骨窩)でつくる。永久設置型が多い。
    • 双孔式人工肛門は、通過障害を除去するために設けられる、減圧目的の人工肛門である。多くは、一時的に使用されるものである。最終的処置としてそのままにしておくこともある。ストーマは大きく、形が一定しない。内容物の漏出が問題となる。双孔式では、糞便が遠位結腸へ通過するのを、必ずしも完全に防ぐことはできない。
  • 患者の半分は、ストーマ周辺に炎症を起こす。
    • 2つの皮膚炎
      • 接触性皮膚炎(アレルギー)
      • 排泄物による皮膚炎(器具の装着不全) 
  • 便秘を起こしやすい食物は、ジャガイモ、白パン、米、麺類、チーズ、バナナ、ピーナッツ・バターなどである。
  • 腸内ガスやにおいが発生しないようにするためには、食事の調整が必要である。たまねぎ、キャベツ、胡瓜、豆類、ヒラマメ、炭酸飲料水、乳製品の摂取を減らしたり、止めたりすることである。魚、卵、チーズなども、においを発生させやすい。
  • 腸の脱出が仮装着の双孔式人工肛門でよく起こる。絞扼症状があれば手術の適応となる。
  • 嫌気性感染症のために悪臭を発することが多い。メトロニダゾール500mgを1日3回、あるいはクロラムフェニコール500mg又は、クリンダマイシン150mgを1日4回投与すると、効果を挙げることがある。いったん、においが減ったら、後は少量の連続投与でよい。
  • 直腸腟瘻-----人工肛門造設術を行う

直腸がん

  • においは、メトロニダゾール250〜500mgを1日3回使うと減らせる。

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