緊急事態の対処法
ひどい痛み
- 激しい痛みは医療上の緊急事態であり、ただちに対応しなければならない。
- 抗不安剤(ジアゼパムなど)とモルヒネ(場合によれば注射)とを、同時に投与する必要がある。もし痛みがよくならないときは、1時間後に同じ併用投与を繰り返す。2時間後と4時間後に痛みの再評価をする。2回目以降の投与量は、前回の投与に対する反応をみて決める。
パニック(錯乱)
- パニック発作は最もよくある緊急事態である。パニックを起こさせる根底にあるものは、恐怖である。家族や信頼する看護婦が付き添ってくれていることが、何よりも助けになる。鎮静薬も必要になる。
- 症状
- 集中力の低下、記銘力の低下、失見当職、誤認、パラノイド妄想、幻覚、散漫で辻つまの合わない話し方、不穏、攻撃的な騒がしいふるまい
- 説明
- 気が狂ったのではないことを強調する。
- 症状が消える時が必ずあることを強調して話す。
- 治療
- 患者を、正気な思慮ある成人として扱い、礼儀作法にそって接しつづける。
- 一般的な方法
- 手足の拘束は、絶対に実施しないこと。
- ベッドの柵を使用しないこと-----危険なことがある。
- 薬
- 症状が高度で持続的であり、患者自身あるいは家族の悩みとなっているときのみ薬を用いる。鎮静薬を投与したら、数時間後に効果を確認する。症状が増悪していることがある。
- ハロペリドール1.5〜10mgを経口投与または直腸内に投与
- 1日1〜2回投与で十分なことが多いが、それ以上の回数の投与が必要なこともある。
- ハロペリドール経口投与が無効のとき
- ジアゼパム10mgを静注または注腸剤で、あるいはハロベリドール5〜10mgを静注または筋注で与える。投与の目的は眠気を生じさせること
- ジアゼパムが効果をあげないとき
- ミダゾラム(ドルミカム)の持続皮下注
- まず5〜10mgを皮下または筋肉内に注射、次いで24時間あたり30mgずつを持続皮下注入。
- 十分に効果をあげなければ、増量する。典型的な使用量は1〜3mg/時であるが20mg/時にまで増量した例が報告されている
- レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
- 鎮痛、制吐、鎮静作用を併せ持ち、呼吸抑制がない
- 20mg筋注を30分毎に繰り返すか、60mg筋注を8時間毎
- 50〜150mg/ 日で持続静注可能
- ドロペリドール(ドロレプタン)
脊髄圧迫
- 緊急治療を要する。24時間ないし48時間内に治療すれば、機能を回復することがある。
- 典型的な症状と随伴症状
- 脊髄圧迫はがんの進んだ患者に多く起こるが、8%の患者では初発症状として現れる。
- 背部痛(激しい痛み)
- 脱力と違和感(両下肢)
- 排尿困難または尿閉
- 検査所見による診断
- 治療
- 精査後、すぐに治療を行う
- 副腎皮質ホルモンの即時大量投与
- デキサメタゾン30mgをできるだけ早い時期に静注する。
- 効果があれば2〜4mg/日づつ減量
- 同日に放射線療法
- 放射線感受性の高い腫瘍(骨随腫、リンパ腫、白血病)による脊髄の直接的硬膜外圧迫に対しては、診断を受けたその日の内に放射線療法を始める。兆候が現れて48時間以内に放射線療法を行えば、完全回復もあり得る。10日ないし14日にわたって30Gyを照射する。
- 外科的減圧術
- 適応
- 診断が不確定
- 放射線療法中に症状が悪化
- すでに最大量の放射線療法を受けている
- 放射線感受性の低い腫瘍
- 予防的治療
- 椎骨圧壊を伴う胸椎転移の場合には、予防的放射線療法により椎骨全体の破壊や、脊髄圧迫を防ぐことができる。
けいれん発作
- 意識不明の患者でも、家族のために、痙攀発作をコントロールすべきである。
- 治療
- ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)5〜10mgの静注もしくは注腸(直腸内挿入は静注と同じくらい早く奏効する)が最もよく効く。発作が治まるまで繰り返し使用する。
- 水溶性フェノバルビタール(他の薬と混注してはならない)
- 静注100〜200mg
- 単独持続皮下注入法(1日に400〜600mg)
- 維持、予防 血中濃度測定が必要
- フェニントイン200〜500mg/日
- フェノバール30〜200mg/日
- 末期状態で経口摂取不能なとき
- フェノバール100〜200mgを8〜12時間毎に筋注、あるいは10〜20mg/時を持続皮下注
- ミダゾラム(ドルミカム)0.25〜2mg/時を持続皮下注
- ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)5mgを静注
骨折
- 脊椎、上肢、下肢の病的骨折は恐ろしい。しかも痛い(特に、脊椎の骨折)。応急手当として、まず安静にし、痛みをとり、さらに可能なら、いつでも整形外科的固定をする。患者が寝たきりで、予後がわずかに数週間しかなくても、四肢の内固定は欠かせない。骨折をそのままにしておくと、痛みのあまり、患者の気持ちは落ち込む。
- 長管骨の病的骨折が起こった場合、あるいは起こりそうな場合には、プレート固定や随内釘の挿入を考慮するとよい。これにより、長期臥床が防止され、痛みも大幅に軽減する。外科的治療の実施を決断するときには、患者の全身状態を考慮しなければならない。
- 患者の状態が手術に耐えられない時には、
- 直接牽引を行う(2〜4kgの錘を用いて)。
- 下肢を真っ直ぐにする。
- 副木固定をする。
- 鎮痛薬を与えるのは、安静時でも痛みがある場合。
- 0.5%のブピバカイン10mlを、メチルプレドニゾロン80mg(2ml)と一緒に、長い針を使って骨折患部に注入すると,数日間、痛みが消えることがある。
- 放射線療法
- 約50%の症例で骨折治療に有効である(治癒は得られなくても、除痛できる)。通常の照射線量は25Gyで、2週間にわたり5回照射する。
急性気管圧迫、気管内大出血
- 患者の意識がなくなるまで、ジアゼパム(セルシン)またはミダゾラム(ドルミカム)を静注(5〜10mg)
- 静注できないときは、ジアゼパムまたはミダゾラム20mgを直腸内投与
- 継続的に付き添う。