死が近づいてきたとき
- 患者の死が急に近づいているときには、主治医は無力感に陥ることがあるかも知れない。しかし、患者は医師より現実的であることが多く、主治医が魔法を使えるとは思っていない。患者は時間に限りがあることを悟っている。
- 死にかけている患者を、死なせるためにだけ、自宅から病院に運ぶのは、ほとんど意味がない。
- 患者を訪問し続けること。
- 看護婦の言うことに耳を傾けること。
- 状態の推移を、継続的に家族に説明すること。
- 「安定しているわけではありません。急に悪くなったり、数時間後に死亡することがあるかも知れません。」
- 全身衰弱が進むと眠気を増し、日中の休息時間も長くとるようになる。このことについては説明が必要である。「あなたのような病気を持った人は、よく眠ります。」など医師が、理解していることを示す話方や患者が理解できる話し方で。
- 「ベットの中で数日間は静かにしているようにということのようです。明日か明後日、体力が回復してきたと感じられるようになれば、起きてよいのはもちろんです。今は、ベッドの中にいるのが、あなたにとって一番よいことです「今の病状で大事なことは、あなたをできるだけ楽に保ってあげることです」と静かに話しかけること。」→希望をこわさず、悪い知らせをやさしさで和らげ、いずれは患者の望むことを許すことを示唆する話し方。
- 配偶者や家族には、「患者の体力が、がんとの闘いにすべて使われているので、このように弱ってくるのは仕方がないのです」「患者を責めるべきでない、患者はまだ病気を闘っている」と、この状態は、よく起こることで、余分なことでも予想できなかったことでもないことを伝える話し方。
- 薬の使用を、できるだけ単純化すること。
- 嚥下できなくなったら、舌下錠、座剤、注射を用意すること。終末期の、特に在宅の場合には、持続皮下注入法で薬を投与するのが便利である。
- 終末期には、スコポラミンが非常に有用な薬になる。気道の分泌を抑えて、喘鳴を減らしたり無くしたりする。通常量は、筋注で4時間毎に0.4mg、あるいは持続皮下注入法で、24時間あたり0.8〜2.4mgを投与する。この薬は鎮静効果も大きい。
- 患者の近親者の心を痛める終末期のけいれんや局所痙攀を抑えるには、ジアゼパム10mgの注腸が有効である。注腸の代わりに、ジアゼパム10mgを静注することもできる。
- ほとんどの患者は、人生最後の数時間〜数日間は意識不明状態や興奮になる。死が近づくにつれ、落ちつきがなく興奮する患者が、ごく僅か(約1〜2%)だがいる。この場合、即座に鎮静薬を与える方がよい。適切な鎮静薬を与えないでおくと、こうした終末期患者は不快と苦悶のうちに死んで行く。
- 痛みはとれているが、傾眠がちの時には、モルヒネの量を減らす。死期が近づいたときにもモルヒネ投与を中止してはいけない。それまで投与していたモルヒネの少なくとも1/4量を与える。
- 高カルシウム血症(血清カルシウム濃度が12.0mg/dL以上)が原因で、傾眠状態の起こることがある(吐き気、口渇を伴うことが多い)。
- 尿毒症の治療法はない。しかし、原因がわかっていれば対処しやすくなり、患者や家族に説明もできる。
死戦喘鳴(死前喘鳴)
- 定義:下咽頭における分泌物の振動によってもたらされる「ぜいぜい」という雑音で、呼気と吸気の両相で生じる。
- 痰の喀出ができないほど衰弱した患者によくみられる
- 実施可能な治療法
- スコポラミンまたはアトロピン0.5〜1.0mg皮下注(筋注)による分泌の抑制
- 分泌物を除去するわけでなはないので、遅れることなく投与を始める。
- 気管支拡張薬としての効果を持つ。
- 重症肺炎や左心室不全の場合にはほとんど効果がない。
- セミ・ファーラーの体位をとらせる。
- 体位変換によって分泌物流出を促進させる。
- 口腔や咽頭の分泌物の吸引
- 大部分の患者は、このような吸引を嫌う。一般に吸引は、意識のあない患者に行われる方法であるが、この場合に吸引を行う目的は、清潔の保持であり、親族、周囲の患者あるいは医療スタッフのためといってもよい。
- 死戦期における雑音の多い頻呼吸
- 患者は気づいていないが、周囲の患者や家族にとっても不快感を与えるので、モルヒネの静脈内注射で呼吸数を1分間10〜15回に減らす。この場合、モルヒネが鎮痛目的に用いられているときには、投与量を2〜3倍に増量する。治療目的は呼吸数と呼吸の深さを減らして雑音を緩和させることである